ふじようちえん見学6<モンテッソーリ教育・「いろんなモノ・コトがない」>

ふじようちえんの設計は、「屋根の家」で知られる手塚貴晴+手塚由比夫婦です。
この建築家夫婦の作品はどれも開放的で、シンプルな形をし、自然を大々的に取り込む工夫があり、
建築がその自然を邪魔しないように素材の種類を最小限に抑えている、とても潔く気持ちいい建築が特徴です。

加藤園長先生および佐藤可士和氏からの設計依頼のスタートが、「この場所でこのスケールで屋根の家があると気持ちいいだろう」というオーダーでした。
敷地を訪れた手塚氏は、既存の大木そして広い園庭を見て、この雰囲気は残したいと思い、
そして子供はぐるぐる回ることが好きであることも考え、行き止まりのない建物にしたいと考えたそうです。
手塚氏は、既存の大木を避けるのではなく取り込むように、フリーハンドで楕円を描き、それが園舎となっています。
※GAJAPAN86より引用

この建物について私たちなりにまとめてみると、あるべきものが「ない」というのが特徴であると考えました。



■終わりがない
言い換えれば行き止まりがないということ。楕円状の園舎は、ぐるぐる回るのには最適。ふじようちえんを歩いて感じたのは、
気がつくと2周も3周も回っているのに飽きないことでした。このような経験ができるのはめったになく、
子供にとってはいつまでも新鮮な体験になるのではと思いました。入り口も出口も、手前も奥もないことで、
子供にとって平等な環境が用意されていると思っています。このような環境を用意することが、
モンテッソーリのHelp me,Do it myself「私が1人でできるように手伝って」の精神につながっているように思います。
おまけですが、私がここの園児だったら、一日中「志村後ろー!」(※ドリフ世代にはわかるかと思いますが)的な遊びをしているように思います。



■壁がない
この建物には壁がなく、みんなひとつ屋根の下です。
クラスごとの仕切りは、高さ1m程度の収納家具にはさまれた板だけ。目隠しにはなるが、それ以外の音や空気はひとつながりです。
こうすることで部屋の大きさを自由に調整できたり、囲まれていないことで部屋の広さを感じたりします。
管理する側としては、部屋を分けないことはいいことばかりではありません。部屋を越えて勝手に走り回ったり、
大声を出す子がいればそれが伝播して収拾つかないような合唱になるかもしれません。
そこは、加藤園長先生はじめスタッフの方の「子供に自由を与えてあげたい」というがんばりがあることが想像できます。



■境界がない
この建物は、部屋でもあり、廊下でもあり、縁側でもあり、外でもあります。部屋と園庭を仕切るのは全開可能なガラス戸のみ。
床の段差もほとんどなく、靴をはけばすぐ外へと行くことができます。ガラス戸から見える景色は天候や季節でも変わります。
雷の日は大変な事になりそうですね。みなさんも小さい頃、青空教室や林間学校などの思い出があるのではないでしょうか。
ここで暮らした日々は全てがリアルな体験として、子供たちの記憶に刻まれることと思います。



■限定されない
建物自体が遊具であるというコンセプト。滑り台はあるものの、それ以外は見当たりません。
当初ブランコなどの遊具を設置することも検討されたようですが、ブランコが「座る、漕ぐ」という動作に限定してしまうことを危惧して見送られたようです。
このことにとても感銘を受けました。子供の発想は自由です。木につかまればウンテイにもなるし、かくれんぼの隠れ蓑になります。
デッキが鍵盤に見立てられるかもしれません。そういう自由な発想を喚起できる環境さえあれば、子供はなんでも遊具にしてしまいます。

子供との向き合い方は、手を引いて導いてあげることではなく(受動的行動)、そばにいてできるのを見守ってあげる(能動的行動)ことが
重要だと私たちは考えています。
この幼稚園は、そうゆう環境にあふれていると思いました。愛知県にもこのような幼稚園ができるといいなと思っています。
そして機会があれば、私たちも教育施設の設計をしてみたいと思っています。
(いつのことになるやら。でも、願い続ければきっとかなうはずです!)


LIFEVISTA ライフビスタ建築設計事務所
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